企業の責任

職場における健康管理については、全て従業員側の自己責任として片付けることはできません。
アスベストを取り扱っていた住宅メーカーや廃材メーカーの従業員が、長期的な勤務によって肺がんや悪性中皮腫を患うことになってしまった事件は社会問題として大きく取り上げられました。
つい最近の事例としても、大阪の印刷会社に勤務していた人の多くから胆管がんが発症されたという事件がありました。
従業員は基本的に企業側からの指示に従って仕事を行うため、こうした長期的に従事することによって大きな健康被害が起こる可能性がある事項については、事前にきちんと対策をとっておかなくてはなりません。
従業員側もこのことをしっかりと把握し、危険な状態での仕事を強要させられるような場合には、企業側にきちんと配慮を求めていくようにしましょう。
万が一応じてもらえない場合も記録をとっておくことにより、病気が発生した時の補償を求めることができるので、証拠を残しておくことが大切です。

体における疾病については、比較的従事した仕事内容と健康被害を直結して関連付けることがしやすいのですが、問題なのは仕事内容そのものについて危険はなかったものの、仕事の時間やプレッシャーが従業員に長期的なダメージを与えている場合です。
「過労死」という言葉が英語でも「karoushi」として揶揄的に使われたのは90年代ごろのことでしたが、責任感の強い従業員が連日長時間労働や徹夜を繰り返したことにより、脳幹部出欠や心筋梗塞など急に重大な疾病状況を生んでしまうこともあります。
あるいは、長時間労働や仕事のプレッシャーからうつ症状を患ってしまい、自殺や自殺未遂におよんでしまう人も相当の数となっています。
そのような間接的に悪影響を及ぼす労働状況についても、最近では個人の責任ではなく企業側に配慮義務があるものと扱われるケースが増えてきているので、まずは企業側に配慮をうったえ、記録を残しておくようにしましょう。

健康管理義務

企業側に具体的に課されているのは労働安全衛生法による健康管理義務です。
内容としては、1)作業環境の測定、2)健康診断の実施、3)病者の就業禁止、4)健康教育、体育活動などの便宜供与、5)快適な職場環境の形成のための措置となっています。
最後の「快適な職場環境の形成」というのは、パワハラやセクハラなど精神的な悪影響を及ぼす事項も含まれています。
おかしいと思ったことは我慢をせず、まずは上司や周囲の人に相談をしてみましょう。